さて、バレーボール教室の話も終わっていよいよサマーリーグの決勝リーグについて。



サマーリーグというのはその成り立ちの目的を考えると、「勝った負けた」を争うことが第一義の大会ではないのですよね。

それぞれのチームの『強化目的』があって、そこに充分な成果を感じられたならば、たとえ試合は全敗でも勝利条件は満たしたことになる。

もちろんチームが成果を実感するには『試合の勝利』が一番わかりやすいのですが、『強化目的』から軸がぶれてしまっていたり、流れや勢いで試合に勝ったりしたのでは大会の意義からすると本末転倒となってしまう。



試合結果だけを伝えられて「好きなチームが勝った」と喜んでいるだけではいけない分、見る側にもいろいろなことを求められる大会です。

今のバレーボールを扱うメディアのほとんどに「見てわかる結果」以上のものを伝えてくれるという期待が持てない以上、できる限り現場で試合を見ておきたい。

「強化」を目的をした場合の各チーム監督の采配なども見ていて面白いポイントです。



今回はサマーリーグ決勝リーグで、この『強化目的』を充分に果たした女子チームを私が個人的にランキングにしてみたいと思います。



男子チームは日頃から追って見ているわけではないので、私にはランキング化できません。

どなたかやってみてください。





サマーリーグ女子2010 最終成績



1位 東レアローズ(2勝1敗/セット率1.4)

2位 パイオニアレッドウィングス(2勝1敗/セット率1.2)

3位 日立リヴァーレ(2勝1敗/セット率1.0)

4位 JTマーヴェラス(0勝3敗/セット率0.67)


参考:http://www.vleague.or.jp/standings2/season_id=489&round_id=6





「勝った」「負けた」と目先の結果だけしか見えないと、東レファンはバンザイ、JTファンはがっかり…ということになるのですが、リーグに向けた選手強化をサマーリーグの『目的』とすれば、それなりの大会の使用方法があって、「勝った」「負けた」以上に『効果』が求められる。

日頃はバレーなんて見ない大多数の地上波系バレーファンはともかく、一年中バレーボールを見ているファンがこういう目線を持っていれば、例えば全日本女子の今年のワールドグランプリの使い方のようなことはなくなっていくはず。



こういう視点を提示していると、どういうわけか「負けてもいい」と言っていると思われるんだよなぁ。

・本番の勝負での戦い方を考えてチーム作りをイメージする。

・チームのウィークポイントなどを分析して、重要度の低い大会を課題を持って戦って強化をしていく。

・対戦相手との現状の戦力差を分析して、現実的な『目標』を立てる。

・課題に対する『達成度』を目標達成度とゲームの内容から判断して、次のステップへの課題の修正を行う。


これってさぁ、ある意味「メダルが目標」といいながら試合に負けて「課題が見えた」と言い続けるより難易度は高くないか?



ちなみにオリンピックで金メダルを目指すアメリカ女子チームの世界選手権での目標はベスト8だそうです。

ちなみにアメリカ女子チームのワールドグランプリでの最終成績は優勝。



これだけのチームが結果に対する『目標』をベスト8に設定してくるということは、技術・システム・戦術などの個々の課題の設定がとても高いということが想像できる。

大林素子の大好きな「ムード」とか中田久美が大好きな「勢い」とか吉原知子が大好きな「リズム」とかを排除してもしっかりとベスト8を獲得してやろうという意気込み。

オリンピックでは必ず結果を出してくる強いチームからは、こうした最終的な勝利へのアプローチ方法も学んでいきたいものです。





試合をスコアをつけながらシカメツラで見ていたわけではありませんが、「今回はこのチームにとっていい大会になったな」と感じることが多々あったので、見た範囲でサマーリーグ決勝を有意義に使えたチームをランキング化してみます。



kaz10000が選ぶサマーリーグ女子2010決勝リーグを有意義に使えたチームランキング



1位 パイオニアレッドウィングス(監督:宮下直樹)

今回は茨城県のチームを中心に観戦するつもりで、本当はパイオニアの試合は見ない予定だったのですよ。

しかし男子コート側でつくばユナイテッドを観戦中に遠目で見た冨永こよみにびっくりした。

いやいや、眉のライン処理なんかの手入れが行き届いて冨永が色っぽくなったとか、「ありゃ男だな」とか、そういうことではなくて、トスが飛躍的に向上していたのです。

女子コートに移動して、パイオニアを中心に試合を見ることにした。



リーグでシーズンを通して安定して今回のようなクォリティをキープできるようなら、来年は全日本の正セッターでもいいな。

それくらい驚いたので、パイオニアについては別個エントリーを上げます。



2位 日立リヴァーレ(監督:菅原貞敬)

リヴァーレは以前から好きで、リーグでもよく見に行っているチーム。

毎年毎年、この時期は戦力的にも課題は多いチームなのだけれども、いろいろ取り組まなくてはいけない課題を一個一個潰しているのは充分感じられました。



以前から試合もよく見ている好きなチームなので、こちらも単独エントリーを立てます。



3位 JTマーヴェラス(監督:石原昭久)

石原監督といえば、サマーリーグではリーグで起用していない選手をフルに使ってくる監督なのですよ。

全日本などに選手を数多く持っていかれているのですが、アップゾーンにいる選手は谷口雅美・吉澤智恵・石川友紀・川原麻実と全日本Bくらいは組めそうなメンバー。

川原は初日の第2試合で起用されていたけれども、これは坂下麻衣子のコンディションがフルではないからでしょうか。

他のベテラン勢は何かあった際のバックアップとしてスタンバイはしていたけれども起用無し。

「何かある」は「試合に負けそうになる」ではないのがサマーリーグのサマーリーグたるゆえん。



坂下・川原・高木理江あたりはリーグでも起用機会が多いので、すでに「サマーでお試し」が必要な選手ではない。

このサイド陣がフォローする形で、セッターの河合由貴がなかなかいいトスを上げていたのですよ。



河合といえばセミ・オープンのトスの印象しか持っていなかったのですが、今回は平行やクイックも積極的に用いていた。

おそらく『テンポアップ』が河合の今回のオフシーズンの強化課題だったのでしょう。

パイオニアセッター陣と比べてしまうと、『ファーストテンポ』への本質的理解をしているとは言い難いけれども、以前からアタッカーが打ちやすいトスを心がけているようには感じられたので、良い方向へのステップは充分感じられたのでした。

理詰めのアプローチのほうが時間的には近道なのですが、間違った『低くて速いトス』の方向に走らなければまぁよし。



中堅サイド頼りの面も少しあるけれども、プレイしている姿を見るのは春高以来になる西山慶樹やプレイを見るのが初めての千葉智枝美にもかなりの打数を打たせていた。

次のステップとしては、センターに石川友紀を入れて、「毎セット5点以上をAクイックで取れ」というテーマなんかを河合に与えてみてはどうでしょう。



あと細かい動きで気になったのは、初日のリヴァーレ戦後に石原監督が坂下に、スパイクインパクト後のフォロースイングの軌道についてアドバイスをしていたところ。

坂下は腰痛でも抱えていて、着地に影響するフォロースイングの改善にでも取り組んでいるのかな?

利き腕と同じ足側にフォロースイングの手を運ぶ動きは、ピンポイントを狙うスパイクの軌道を安定させるためにも私はやっていたことなので、空中での旋回が激しいスパイクフォームで打つ人には私もお勧めしておきます。



少し心配なのは、せっかく選手にいい傾向が見られてきても、いざ本番になると石原監督はあまり大胆な選手起用を見せないこと。

理詰めのアプローチではない分、河合にはパイオニアセッター以上の実戦経験が必要になってきます。

なんとかスイッチバック以上の起用をしてみてもらいたいところです。



4位 東レアローズ(監督:菅野幸一郎)

今回はセッター田代佳奈美の育成大会だったようでした。

セッター中道瞳で、宮田由佳里・築地保奈美の両センターをいよいよ本格的に鍛え上げるかと思っていたら、そうでした、大山未希がビーチに転向したのでした。

サブセッターの準備が急務。



ただ、この田代にきちんとテーマを持って戦わせることができていなかったと感じるのですよね。

最初のリヴァーレ戦での高田ありさ頼みのトスを見て、とりあえずトスがどうこうというのは感じないけれども、それで?…という感じ。

菅野監督はリヴァーレ相手にまさかの劣勢で、勝利のために森万里子(西脇万里子)を投入しますが、この「勝利のために」がサマーリーグ的には間違い。

田代を育成するのであれば、センターを使う意識を持たせないといけないのに、それをやっていないからレシーブはリヴァーレよりも高い数字を残しながら、2セットで西脇の打数が10というお粗末な配分。

ちなみにこのリヴァーレ戦、東レセンターの打数は合計38。

高田ありさがこの試合で一人で53本打っていることを考えると、センターの技量を考えたら少なすぎる。



初日2試合目となったパイオニア戦ではこっぴどく言われたのか、高田ありさの打数は19に封印して、センターの打数は3セットで33と改善される。けれども、22本は和田麻里江。

なんだかベンチで何を言われているのか想像がつくし、言われたまま何も考えずにやっているからこういった極端な結果になる。

この極端な結果が、相手チームの状況を見ながら自ら仕掛けてやる感のもとで出てきたのであれば、オーラを感じたりするものなのですが、残念ながらそういう感じではなかったのですよね。



2日目のJT戦はフルセットにもつれこむ淡白な試合に飽きて、表彰式をあきらめて途中で体育館を出たのですが、グダグダなJT相手にようやくバランスの取れた配分になってきたようです。

しかし途中まで試合を見た感じでは、リーグでの起用はまだ難しい。



セッターを育成するならするで、最初からセンターを固めて課題を与えれば良かった。

あわよくばセンターも…という宮田・築地の併用や、「勝利を」という目先の欲が軸をぶらしてしまったのが、今回の東レアローズ。

最優秀選手になった高田ありさは、リーグでの出場機会も多いし、サマーリーグで受賞して喜ぶレベルの選手ではない。

チームの底上げを考える上で、目に見える結果以外にほとんど成果を感じられなかったのが東レアローズだったのでした。


[Web全体に公開]
この記事の前後の記事(新着順)
・日本バレーボール楽会in名古屋 明晩開催
2010年09月10日  [Web全体に公開]
【閲覧中】サマーリーグ決勝リーグに行ってきました。 その3 大会を有意義に使えた女子チームランキング
2010年09月16日  [Web全体に公開]
・Vの足音
2010年09月07日  [Web全体に公開]

1件のコメント


  1. by彷徨う情熱! on 2010年9月17日 @17時08分

    サマーリーグ、お疲れさま。

    楽しい大会でした。

    分析に対してのコメントはなかなかし辛いのですが、

    色々な見解があるという事でコメントします。



    パイオニア&日立

    今回評価が良かった2チームですが、結局のところ勝敗に一番強くこだわったのはこの2チームで、

    それ故の内容と結果でしょう。

    冨永は確かにトスの質もさる事ながら、更なる可能性を感じさせてくれました。

    しかし、他のセッターがやらない様な凡ミスもやらかしてたのですが、目をつむりましょう・・・



    日立は毎度チームをそれなりに作ってきますが、

    これで「江畑がいれば」ではなく、「江畑がいなくても」と思わせてしまうのはさすが・・・





    JT

    坂下は随分と止められた。

    サマーであれだけ止められれば、それなりにショックかな?

    実は使いたかった川原の方が、コンディションがフルではなかったのかも。

    負けっぱなしで課題は多く、次は良くなるしかないですが、やはり有意義ではなかったよ・・・





    東レ

    相変わらず勝者には辛口な分析ですね。

    私の見解では、東レが一番有意義だったと思います。

    強いので見落としがちですが、東レのスタメンが一番平均年齢が若いですし、

    森の投入も正解でしょう。

    分析されている通り森には打数ではなく、精神面での効果を期待しています。

    特に最後のJT戦では、

    勝負どころの踏ん張りを若手は実感したと思いますよ。



    JTの石原監督が大事な所での弱さを敗因に上げてましたが、結局メンタルです。

    そのメンタル面で踏ん張れた東レの若手は、やはり有意義だったのでは。



    セッターの田代に関しては仰る通り、そんなに確たるテーマは持たせてなかったでしょうけど、

    大雑把に悪くはなかったですよね。

    その分、まだまだ成長が期待できます。



    それと東レはとにかく、

    高田ありさが気持ち良くプレー出来れば良いのです。

    高田ありさに沢山打ってもらい優勝して、

    MVPを取ってもらえばチームがまとまるのです。

    それもみんなが理解していたように見えました・・・



















ゲスト さんとしてコメントする

お名前:
コメント:
パスワード:

※管理者による確認後にコメントが掲載されます。
掲載されない場合もありますので、あらかじめご了承ください。
※この記事へのコメントは管理者による確認の後、Web全体に公開されます。