ワールドグランプリ。全日本女子は最終的に第5位ですか。

一方の全日本男子は、ワールドリーグ予選で韓国に2連敗して来年の出場権を得られず。

男子のほうは、期待して長野まで2週続けて応援に行っただけに、けっこうダメージが大きかったのでした。



女子は5位といっても、これは久々に自力でもぎとった堂々の5位と言ってもいいでしょうね。

ファイナルで、ブラジルとイタリアに勝利。

アテネオリンピックや北京オリンピックの、12チーム中5位(実質8位)などよりもしっかりと戦って収めた成績。

現時点での戦力を考えると、ワールドグランプリという戦いにおいてはかなりの成果を収めたと言ってよいでしょう。



ただし、男子も女子も同じ問題が浮き彫りになってくる。



戦 略 的 敗 北



オリンピックからオリンピックまでの4年間のサイクルの中で全日本のバレーを考えていくにあたって、男女共に同じ過ちを犯してしまっているのです。







その過ちとは『大会の位置付け』『大会の使い方』

『大会の位置付け』というのは100%戦略面の問題。そして『大会の使い方』というのは戦略的な要素の大きい戦術面の問題。



『戦略サーブ』なんていうアホな用語は私もけっこう馬鹿にしてきたおかげか、さすがにそろそろ耳にしなくなってきました。

しかし、『戦略』と『戦術』という用語を意識的な使い分けをできずに、いつまで経っても戦略というものが立てられないのが昔からの日本人の特性のひとつとして知られています。

日本人は『戦術』好き。でもね、最近は『戦略』って言葉を使うのがカッコイイと思ってよく使われる。

そういえば『国家戦略局』っていうのを民主党が作ったよね。

でも過日、参議院予算委員会を見ていたら、答弁によると「内閣のアドバイス機関」として民主党は考えているらしいよ。

そりゃ軍隊で言うなら大隊や連隊本部みたいな仕事じゃねーの?

『戦略』っていうのは状況に応じて対応することではなく、進んでいくための基本的な方向性・枠組み・方針なのにね。



バレーボール全日本チームの強化を考える時に、私は戦略面を担当するのが協会サイド、戦術面を担当するのが監督を中心としたチームスタッフと大まかに考えています。



こういうことは軍隊で考えるとシンプルでわかりやすい。

日本の自衛隊を例に大雑把に言えば、戦略面を担当するのが防衛省(文官)と統合幕僚監部(武官)。それを統括するのが内閣府。

戦術面を担当するのが陸・海・空の各部隊。

実際は単純に割り切れない部分も多いので、軍隊のように大規模な組織だと上級司令部のようなものが設けられて、ある特定の戦域の戦略面を担当したり、組織の枠を超えた部隊の戦術的運用を担当したりするけれども、そこまで話を広げるとかえってややこしくなる。



要するに協会サイドの役職の人々が戦略面担当で、監督以下スタッフおよび選手が戦術面担当である。と、考えるとわかりやすい。



『戦略』と『戦術』を区分して考えることができないために、滅茶苦茶なことをやっているのが多くの日本人の特徴なのですよね。

全日本には「君の人気や話題性が必要だから」と、戦術指揮官が戦力として起用できない故障選手を実戦部隊に押し込んだりするのはよくある例でしょう。

中には自分が現役時代の戦訓で頭が停止したまま、現代戦術や戦力構成などを学びも考えもせずに現役選手に直接指導しようとしたりする人もいることでしょう。



ああ、いた。しかもバレーボール協会ではなく似たような競技の別の団体(=戦略担当組織)の長なのに、銃剣突撃を教えたがるような人が。

すでに40年前には歩兵の突撃が機関銃に制圧された経験を持ちながらその戦訓を生かせず、第一次大戦で発展した諸兵科連合も浸透戦術も機動突破も学ばず、第二次大戦において日露戦争の時の頭で銃剣突撃をさせようとするようなもの。

しかも日露戦争当時だって坑道作戦(工兵)や砲兵、しまいには28サンチ砲(海軍砲)なんかの協力も得ていたのに、そういうことだってすっかり忘れている。



そういえば立場が逆で、「バレーボールへの注目度を高める」という戦略的目的のために、TV出演などの媒体露出に必要以上に妙に積極的で、CGで顔を金色にしたりして率先して番宣CMに出演したりするような戦術指揮官もいた。



シンプルに合目的性で考えたらおかしな話です。







まぁ、男子のほうの失敗は『大会の位置付け』という戦略部分の失敗が大部分です。

大きくカテゴライズするとスケジューリングの問題ですね。昨年も男子はこの失敗をやらかしていました。

今年のワールドリーグ出場に関して、予選回りとなってしまって、そこで敗北しています。



一応この時の敗因のひとつである『選手のピーキング』という戦術面の要素が大きい問題は、今年の大量召集という形でフィードバックされていました。

ただ、『大会の位置付け』という問題は改善されていなかったのですよね。

世界選手権という、オリンピックに向けたマラソンで言うところの「折り返し地点」…「35キロ地点」に例えたほうがいいかな?

とにかく、そこに向けたスケジューリングに力が注がれていた様子が感じられないのです。



ちなみに昨年の敗戦後、私はこんなことを書いています。

参照:グラチャン

とりあえず男子はワールドリーグをTBSに任せておいて、来年は6月に南米武者修行・7〜8月にヨーロッパ武者修行をやって世界選手権に備えよう。

夏場のヨーロッパではイタリアを拠点にヨーロッパ中をバス移動で転戦しよう。

ボロボロになりながらイタリアに戻った時に「ああ、やっと帰ってきた」と選手たちが思えるようになれば、世界選手権もよい状態で戦える。

名付けて「イタリアを精神的ホームにしてしまおう」作戦。

すでに越川が実行に移している。


タイトルと全く関係の無いところで文章を書いていたりするので、探し出すのに苦労した。



こうした取り組みができず、しかもワールドカップイヤーのワールドリーグ出場権を逃したのは、かなり手痛い。

ワールドリーグに出場できないのは、オリンピックイヤーだけでいいのにね。

オリンピックイヤーだけはあの大会が邪魔になる。





長野での韓国との戦いで気になった部分は、ワールドリーグで充分に揉まれてきたチームと主戦セッターを欠いた新設チームとの錬度の差でした。

ラリー中でも積極的にセンターのクイックを使ってきた韓国。

1日目にセンターを全く使えていなかった近藤や、使っても「テンポ」の理解がまだできていなさそうな今村と、韓国のセッターとの力量差は歴然としていました。

そのクイックになかなか対応できず、センターコミットで対応しても好きに決められる日本。

それからサイドからの攻撃がクロス中心になっているにも関わらず、いつまでもストレートを閉め続けるブロック。

これなどは後ろから「クロス締めろ」ってけっこう叫んでいたのですけれどもねぇ。



セッターの経験不足や他の選手の試合感不足もありますが、こうしたベンチワーク・スタッフワークで対応できそうな部分での試合感不足というのも実際に見ていて強く感じたのですよね。

分析によって出ていた指示もあったかもしれませんが、すぐにアジャストするにもやはり実戦での練磨が必要になってきます。

ようするに、兵棋演習と部隊訓練だけで満足な対抗演習もやっていない部隊を、いきなり重要な拠点攻撃に投入してしまったようなもの。



次に韓国と当たった時にどうかということを考えると、センターのクイックを連続で止めたセットは確実に取っているので(所詮時間差「ナイスコンビ」のチームなので、クイックの使用が減ればあとは比較的簡単)、たとえ次も全日本新人セッターで戦うにせよ今回のような敗戦はイメージできないのですよね。

選手個々のパワーも韓国に負ける要素はほぼ無いし、やろうとしている基本戦術も『時間差』主体の韓国バレーは『位置差』を主体とする全日本と比べると古臭い。

セッターにきちんと動ける宇佐美・阿部級が一人いれば、おそらく楽勝でしょう。





では植田監督やスタッフワークがまずかったのが敗因かというと、それをヒステリックに追求するのも違うでしょ。

ワールドリーグ予選の敗戦ぐらいで「監督をやめさせろ」なんて言っていたら、それこそ継続的な強化は誰にもできない。

ワールドカップイヤーからオリンピックまでは一気に事が進んでいくことを考えたら、強化方針が見えない監督を除けば世界選手権の成績で監督を交代させることにも私は否定的です。



それに、来年のワールドリーグに参加できないのはチーム強化の点では不利にはなるけれども、女子と比べたら致命的なことにはなっていない。

だってさ、今年の全日本男子は大量招集をした上に、フィジカルトレーニングによって体力と意識の底上げはかなりできている。

このおかげで、来シーズン以降確立変動を起こす選手が発生する可能性は飛躍的に高まった。

さらに新人セッターに、来年の大会出場権をかけた大事な試合を任せるという貴重な経験を積ませたんだぜ。

しかも2人も。



後は来年度召集後の、ワールドカップまで、あるいはオリンピックまでのスケジューリングを上手に組み立てることが大事なのではないかな。



そこをうまくできれば、私が勝手に考えている全日本男子の目標

・オリンピック出場権獲得

・オリンピック予選リーグ突破


このラインは充分に狙っていけるのではないでしょうか。



もちろん、長中期スケジュールというものは、戦術指揮官の希望を聞きながらも戦略担当者が主導権を持つべき仕事です。

予算も大きく関わってくる問題だしね。





長野の試合の感想は時間があって気が向いたら書くことにします。


[Web全体に公開]
この記事の前後の記事(新着順)
・Vの足音
2010年09月07日  [Web全体に公開]
【閲覧中】問題は同じところにあるのだ まずは修正がききそうな男子の話から。
2010年08月31日  [Web全体に公開]

2件のコメント


  1. byピース on 2010年8月31日 @19時02分

    こんにちは



    北京でのアタフタ采配から、少しはマシになったかなと思っていましたが(グラチャンの古田選手はダメ)

    大事な試合をとれませんでしたね。



    そもそも、モロクマコーチって何かに長けた一面があるのでしょうか?



    未だにブログで情報流している以外に、コーチングでどんな役割を担っているのか…



    kaz様はモロクマコーチの長けた一面を知っていますでしょうか?





    よくサッカーで、協会批判をしているニュースがありますが

    ああいうのがバレーボールの世界にも無いかなあと思っています。

    まだまだメジャーでないバレーボールはそんなことまでしないか…



    しかしいつか中田さんやモトコさんがチクリと協会に物言う風になってもらいたいものです。







    世界選手権の結果はわかりませんが、ワールドカップに向けてホントに実践を重視しないと今回の繰り返しですからね…

  2. bykaz10000 on 2010年8月31日 @23時13分

    >ピースさん

    私は別に敗戦の犯人探しをしたり、協会批判をして強いものに意見した気になって悦に入りたいわけではないのですよね。

    うまくやってほしいから意見を言いたい。



    あと、このエントリーに関しては、ワールドリーグ予選程度(来年のチーム力アップを考えるとかなり重要な大会でしたが)の試合で負けたことで、ヒステリックに「監督解任!」とか言い出している人たちに状況を整理して見せたいだけ。



    男子に関してはまだまだ修正が効く範囲の失敗。

    来年協会がどれだけ男子に予算をかけて交渉ごとに力を入れるかにもよりますが、少なくとも私が考えている全日本男子の目標に到達する範囲ではリカバー可能だと考えています。



    それから中田久美や大林素子が山田重雄というバックボーン無しに協会にモノを申すわけが無いと思っています。

    中田久美が一個年上。大林素子が一個年下。

    中学や高校時代から二人のプレイは見ていますけれども、昭和の女子バレー選手は基本的にただの監督の奴隷です。

    自ら考えてプレイを創造したりしてきたわけではありませんから。



    「元天才セッター」とか「元全日本エース」とか紹介されて、凄い人と思われがちですが、中田久美の18歳当時のトスなんかは「えれぇ自分勝手なトスを上げるなぁ」なんてことを言われていたのですから、あまり神格化しないほうがよろしいと思います。



    二人にはまず、きっちりとせめてばぼったーレベルの世界のバレーボール戦術の認識をしてもらって、日本のバレーボールの現状認識をしっかり持ってもらうことが必要だと考えています。
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