「死が私を選ばなかった」
「人生は続くのよ」

そう言って,失恋や悲劇をも乗り越え,美しく年齢を重ねてゆくダリダだったが,仕事面でも次々に新しいことにチャレンジ。

様々な,幅広いジャンルの歌を歌い続けてきたが,40代半ばにしてディスコブームに乗りさらに大ブレイク。

アメリカでは,バックダンサーズを従えての大掛かりなショーを行うために,『サタデーナイト・フィーバー』の振付師が彼女のダンスを特訓。

だが,多忙になればなる程,売れっ子でい続ければい続ける程,リシャールとの愛の生活がおろそかにならざるを得ず,仕事を持っているでもないリシャールは一人でヒマを持て余す。

ある晩,外出から戻った2人が門の鍵が開いていることに気づき,不審に思う。

家政婦は休みの日なので,おかしい…とダリダが言うと,血気にはやったリシャールが,ダリダが止めるのも聞かずに拳銃を手に屋敷に乗り込んでゆく。

そして,屋敷にいた侵入者を撃ってしまうのだが,それは家政婦が連れ込んでいた恋人だった。

雇い主が留守中,恋人を連れ込む家政婦ってドゥなの…?!と思ったが,さらにびっくりしたのが,リシャールが過剰防衛で逮捕され,次のシーンでは獄中の人になっていたこと。

面会に来たダリダに泣きながら,「必ず返すから,保釈金を払って出してくれ」と頼むシーンは情けなくて,何ともいえない気分になった。

寂しがりやのダリダはよせばいいのに保釈金を払い,リシャールを出してやる(犬を世話する人間も必要だろうし)のだったが,それを負い目に思ったのか,よけいにリシャールは僻みっぽいダメ男になってゆく。

完全にヒモと化し,仕事で飛び回るダリダになかなか一緒にいてもらえないため,外で女遊び。

挙げ句の果てにはそれを咎めるダリダに暴力を振るおうとする。

絵に描いたような,お約束通りの転落である。

だが,家族揃ってのニューイヤーズパーティーの席で,
「老けた大スターさんには文句も言えやしない」
などとマウンティング・クズな暴言を吐き,とうとうダリダに愛想を尽かされる。

「出て行って。この店からも,私の人生からも」

家族たちの前できっぱり別れを告げられる。

ただでさえ,この時期のダリダは自分がだんだん若くはなくなっていることを自覚し,体型維持のために食事の後はトイレで無理やり吐くようになっていたのだ。

物凄い成功を納め,栄華の絶頂にいてさえ,彼女は苦しんでいた。

太りやすくなったから…と婦人科を受診したダリダが,「もしかしたら妊娠かも」と口にした際,担当医が苦い顔で,「もう妊娠は望めません…」と答えたシーンは可哀想だった。

ルチオとの子を中絶したときに卵管を傷つけてしまったためである。

恋人なら,そんな彼女の悩みを察し,精神的な支えにだけでもなってあげよう…とリシャールは思わなかったのだろうか。

長くつき合ってきたクセに彼女のことをまるで理解しておらず,さらに追い詰めるような暴言を吐くなど,サイテーな男だと思った。

一度アメリカで歌ったときは不評(ヒッピームーブメントの時代にシャンソンが受けなかったというだけ)だったため,ディスコショーは成功するのだろうか…と一人でコンサートの前夜会場を訪れるダリダ。

充分に若く美しいというのに,彼女は一人で年齢やプレッシャーと向き合い,闘っていたのである。

続く。
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