昨日から2連休満喫ちうです。

今日は通院日なので,病院の待合室からお送りしていますよ。

昨日は会社帰りにシアターキノで『少女ファニーと運命の旅』を鑑賞してきたのだが,11日には9月に入って初めて(『ワンダー・ウーマン』は2度目なので除外)の新作映画を鑑賞。

それがこの記事タイトルの『ローサは密告された』なのだが,どちらも凄く良い映画で色々考えさせられた。

特にスガイディノスで観た『ローサは密告された』には大いに衝撃を受けた。

フィリピンのスラム街を舞台にした,まるでドキュメント番組みたいな撮り方をした映画。

ゴミゴミした,蒸し暑いスラムの臭気や湿気がたちのぼってくるかのようで,また観ている方もマニラの住人になりその場にいるかのような錯覚にとらわれる臨場感。

そんな映像だけでも衝撃的だったのだが,ショッキングなのがそのストーリー。

4人の子供と麻薬に手を出すダメ夫を1人で養う肝っ玉母さん・ローサは,街のみんなにも好かれているきっぷのいいオバサン。

KISSのバッタモンTシャツをステキに着こなす(笑)。

駄菓子屋(予告ではコンビニとあったが,どう見てもコンビニには見えない昭和のタバコ屋みたいな店)を営む傍らで『アイス』と称して覚醒剤を売り,何とか生計を立てているのだが,ある日突然警察に踏み込まれてしまう。

どうも,誰かが密告したらしい。

銃を突きつけられ問答無用で家捜しされ,手錠をかけて連行されるのだが,留置所でも取り調べ室でもない,事務室のような部屋に拘留される。

ローサとネストール夫婦は4人の子供たちを家に置いてきたので不安でたまらず,刑務所行きになることだけは避けたい。

そこにつけ込んで警察は何と,20万ペソ(日本円にしてだいたい50万?)という桁外れな額の保釈金を要求。

フィリピンの社会には『正義』というものはないのか…?と言いたくなるような警察。

そんな大金は用意出来ない,頼むから見逃してくれ…と懇願するローサ。

驚いたのが,ローサが最初からもう裁判とか服役とか全く考えずに「金で解決する」ことしか頭にないということ。

警察は他の誰かを密告すれば減額してやる…という腐れ外道ぶり。

彼らは,逮捕した者たちから巻き上げた覚醒剤を横流しして得た金で私腹を肥やしているのである。

おそらくこの腐敗ぶりは,ロクな給料を貰っていないからだろう。

金が入る度に『オカマ野郎』と呼ぶ使い走りの少年にチキンやらピーナッツやらを買いに行かせてチープな宴会を開く。

このオネエ少年(なかなか可愛い)はおそらく元ストリートチルドレンで,何かやらかして捕まったけれどうまい具合に彼らに取り入り,事務所に居ついているのだろう。

彼が買い出しに行くシーンでは,コンビニ前でたむろする同じ年頃くらいの少年3人がアンパンの真っ最中でげんなりした。

ローサは仕方なく仕入れ先であるジョマールという売人を密告するのだが,あまり良心の苛責を感じているふうでもなかった。

「悪く思わないでよね…アタシも密告されちゃったんだから。アンタも他の誰かをタレ込んで上手く解放されたらいい」

それくらいにしか思わず,ジョマールをおびき寄せるため注文の電話(プリペイド携帯)をする。

そのジョマールも捕まり,リュックの中から大量の覚醒剤が押収出来たので警察はほくほく顔。

だが,ジョマールは隠れて警察の上層部にメールをしたため,こっぴどい暴力を受けるのだった。

ジョマールの所持していた覚醒剤で得た金と,彼の妻が見逃し料として払った金の分を減額されても,ローサたちの賄賂は5万ペソ。

これだけ減ってもローサたちにしてみれば,まだまだ途方もない金額である。

面会に駆けつけた3人の子供たち(末娘のジリアンは4歳なので,近所のオバサンに預けられていた)が,金策に奔走するのだが,これがもう涙ぐましいというか。

日本で一応ふつうの暮らしをしている私からしてみればそこまで途方もない大金という訳ではないのだが,マニラの中では"下の上"程度の暮らしの彼らにとっては微妙にリアルで切実な金額らしく,それこそもう「いくらでもいいからかき集めよう!!」という感じなのだ。

長男のジャクソンは家の中のめぼしいものをとにかく売って金にしようと駆け回り,長女のラケルは親戚に頭を下げて金を無心,次男のカーウィンにいたってはオッサン相手に売春までする(!!)。

ブラウン管テレビを持って街をうろつき買ってくれそうな人を探すジャクソンが,弟分にして可愛がっていた少年が母を密告したと判り激怒するシーンは胸が痛んだ。

だが,親戚中に借金をお願いに廻ったラケルが,集められるだけの金を手にしての帰り道,水撒きをしていた家の前で滑って転び,やりきれない表情で立ち上がり,無言で再び歩き出すシーンにはしたたかさを感じた。

きっと,滑って転んだくらいのことは何でもないのだろう。父母をムショ送りにされ,子供たちだけで路頭に迷うことに比べたら。

転んでお尻が濡れたことくらい,どうってことはないのだろう。

町内の積立金の受け取りの順番を他の住人に替わってもらった叔母さんがおり,優しい従兄弟のお兄さんがお金を貸してくれ,その横では伯母さん(ローサとは折り合いが悪い)が口では悪態をつき投げるようにしながらもお金を貸してくれる。

カーウィンの売春相手のオッサン(常連なのか,ホテルでのカーウィンの態度にはあまり初々しさが見られなかった)も,鬼気迫る表情で「金額が足りないからもう少し欲しい,お願いだ」と迫られて,断ることが出来ずにATMにおろしに行く…というね。

何だかんだ言ってマニラの人たちは人情豊かなのかもしれない…と思った。

しかし,カーウィンとナニをしたオッサン,「給料の1ヶ月分を払ったのに?!」なんて言ってたけど,どんだけフィリピンの売春の相場って高いの(笑)。

話は脱線するけど,ローサは「太ったどこにでもいるThe・オバサン」という感じだけど,子供たちはみんなそこそこ美形…というのもビックリだった。

3人の子供たちが持ちよった金を数えても,あと5000ペソ足りず,ラケルが自分のスマホを売っていいと言い出す。

長時間閉じ込められているうちに妙な信頼関係が生まれたのか(事務所の清掃をしてたりするし,夫のネストールは宴会のチキンまで食べさせてもらってるし),ローサだけは外に出ていいことになり,自らがラケルのスマホを持って知り合いの質屋に駆け込む。

質屋のオヤジはぶつくさいいながらも何とか5000でラケルのスマホを預かってくれ,交通費をせびるローサにポケットから出した小銭を渋々渡す。

やっぱりマニラの人たちって,情があるのかも(笑)。

お腹が空いていたローサは露店の串肉団子を1本買って,かぶりつく。

これでようやく釈放される…という安堵からか,1口かじる度に涙を流すのだった。

だが,遠くを見つめるその表情にはこれからどうやって多額の借金を返してゆこうか…という思いがあったに違いない。

そんなラストシーンなのだが,ローサのアップでは私もつられて泣きそうになった。

これからは生活するだけでなく,借金返済で大変な日々が待っているのだ。

だが,子供たちだけ残して刑務所に入るという最悪なことだけは免れた。

スラム街のどうしようもない貧困問題,人々のリアルな生活,教育をまともに受けられないため選択肢のない生き方,それでも立ち止まらずに生きてゆこうとする逞しさに衝撃を受け,しばらくは呆然となった。

私にはとても無理だ。あんな環境に放り込まれたら,さっさと野垂れ死ぬ自信がある。

ローサの家族の団結力にも胸を打たれた。

この映画では『正義』が声高に語られることは全くなく,法による解決など誰も考えていない。

こういう世界があるということは頭の中では知っていても,実感として胸に突き刺さる映画だった。

ローサに密告されたジョマールも誰かを密告し,その相手も別の誰かを密告…この連鎖は止まることなく続き,腐りきった警察官の私腹を肥やすシステムとなっているのだろう。

それでも,社会というかローサたちのコミュニティは何とか回ってゆく…ということなのだろう。

これだけ絶望的なストーリーでありながら不思議とションボリした気分にならなかったのは,ローサを含めスラムの住人たちのタフさとしぶとさを羨ましく感じたからである。

世の中は善悪だけで割りきれないものだし,またそうであってはならないと思っている。

だから,こういう映画には無条件に魅かれてしまう。観に行って本当によかった。

でも,彼らの生活の質が少しでもよくなってくれるといいなとも思う。

今のフィリピンの大統領はあまりにも麻薬撲滅に過激な方針をぶちあげているが,いっそ麻薬は合法にしたらいいのに…と前々から私は考えていたりもする。

それはまた別の話で,長くなるからこの辺で。
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